豆の調理~料理の基本【調理と理論#3】
「料理の基本を体系的にまとめてみよう」シリーズの第3回目は、豆の調理になります。
一概に豆と言っても、食用にされているものはめちゃくちゃたくさんあります。例えば、日本でよく食べられているものだけでも、
- 大豆
- 小豆(ささげ)
- いんげん豆(金時豆、うずら豆、大福豆、とら豆、花豆など)
- そら豆
- えんどう豆
- 落花生
- ひよこ豆
- レンズ豆
などいろいろあります。中でも、大豆に関してはメジャーどころかと思いますので、今回は大豆に関してつれづれと書いていきたいと思います。
大豆の調理
吸水
大豆はサヤがカラカラに乾いてから収穫されるため、はなから乾物の状態で市場に出回っております。なので米などと同じように一度水に浸けて、十分に吸水させてからでないと柔らかく調理できません。
なので大豆は調理前に十分に水に浸けておくことが重要なわけですが、まず浸けるときの水の量が大切です。
大豆は十分に吸水させると、最初の重量の100~120%ほどの水を吸収します。なので、浸水させるときの水の量は、豆の3~4倍とたっぷりと用意しておかないと水が途中でなくなってしまい、しっかりと戻ってくれないわけです。
そしてこのときの吸水時間ですが、通常は約8時間ほどかかるのが普通です。
しかし、他の乾物と同じように温度が高いほど早く吸水も終わります。具体的には、
- 夏場では6~7時間
- 冬場では10~11時間
ぐらいを目安にすると良いでしょう。
ただしどうしても急いでいるときは、熱湯を沸かしてそこに浸けると、2時間程度で吸水が終わります。
しかし、低い温度でゆっくりと戻した方が、
- 加熱後の柔らかさがより柔らかく仕上がる
- 加熱時間が短く済む
- しっかりと戻った大豆と戻っていない大豆のバラつきがなくなる
などの利点があるので、時間のあるときは極力水から戻すことをおすすめする次第です。意外と水って、浸けておくだけだと均等に行き届いてくれなかったりってことが多いんですよねぇ。
また他の時短方法として、熱湯を使うよりも効果があるわけではないですが、薄い食塩水(1~2%)やアルカリ性の液(重曹など0.2~0.3%)に浸けておくのも効果的です。
これは、大豆に含まれるグリシニンと呼ばれるタンパク質が、薄い食塩水やアルカリ性の液に溶けやすいという性質を持っているためと言われています。要は大豆のタンパク質が溶ける代わりに、そこに水がしみこんで柔らかくなるわけですな。
ただし、重曹については使いすぎると、pHが高くなりすぎて大豆中のビタミンB1が失われるのでご注意あれ。
加熱
大豆の加熱は十分に吸水されたものであれば、ふつふつと約60分で十分に柔らかくなります。
しかし、より味を良くしたいのであれば普通の鍋を使うのではなく、圧力鍋を使うことをおすすめします。
というのも、圧力鍋を使うと加熱時間が短く抑えられることにより、煮汁への成分の溶出が抑えられるからです。
どれぐらい早く煮あがるのかというと、圧力鍋の内部の温度は115℃~125℃と高いので、圧力鍋から蒸気が出はじめた直後に火を消したとしても(沸騰後0分~5分)、普通の鍋で60分間煮た豆と同じ軟らかさかそれ以上になります。
実際に圧力鍋と普通の鍋で大豆を煮たものを比べてみると(R)、圧力鍋で煮たものの方が、
- 糖量が約1.6倍
- ペクチン量が約1.5倍
もしまだ圧力鍋を持っていなくて、煮豆を作ろうと思っている方がいましたら、安くてもいいんでこの機会にひとつ持っておいてもいいかもしれませんね。
豆腐の調理
原材料が大豆であるということで、豆腐についてもチラッと書いておこうと思います。
豆腐を調理に使うときは、
- そのままの形で使う(ex:冷奴、湯豆腐、煮物、サラダ など)
- 水分を少なくして使う(ex:炒め物、田楽、揚げ物など)
- 形を崩して使う(ex:いり豆腐、白和え、豆腐ハンバーグなど)
という方法を取ります。
特に約90%が豆腐は水分で出来ているため、水分を少なくして使う(絞める、水切りする)という特有の下ごしらえがあります。これをすることによって、
- 料理が水っぽくならない
- 形が崩れにくくなる
- 味が濃厚になって大豆の風味が増す
というメリットがあります。
方法としては、
- 重しをして放置する
- パックから出してそのまま置いておく
- 茹でる
- レンジを使う
などが一般的ですね。しかし、重しをすると圧力で水分が抜けるのは分かりますが、せっかく水分を抜きたいのにお湯に入れて茹でると水分が抜けるというのは、何とも不思議に思ったことはないでしょうか?
これは実は、豆腐に含まれるタンパク質の凝固を利用した方法になります。
豆腐は加熱されると、豆腐中に遊離で残っていた凝固剤のカルシウムと豆腐に含まれるタンパク質とが反応して、収縮されます。肉なども加熱されると硬くなるのは、水分が少なくなることが原因のひとつですが、豆腐も同じように収縮すると水分が抜けるというわけです。
さらに具体的な温度と加熱時間をみていくと(R)、
- 15分の加熱で急激に水分が抜ける
- ただしそれ以上やってもほとんど大差なし
- 70℃~80℃では水分はほとんど抜けない
- 90℃~95℃で15分:約1%の水分が抜ける
- 100℃で15分:約2.5%の水分が抜ける
また湯豆腐をつくるときにそのまま豆腐を茹でてしまうと、熱によって水分が抜け、口ざわりが悪くなってしまうということが起きます。
これを防ぐために、湯豆腐の湯に食塩を0.5%~1%入れることがあります。
これは食塩を入れることにより、豆腐のタンパク質がカルシウムイオンと結びつくのを防いでくれ、硬くなるのを防いでくれるためです。
どうぞよしなに。
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