穀物の調理~料理の基本【調理と理論#1】
このブログでは、調理のコツ的なものを過去に行われた実験などを元にちょこちょこと紹介してきました。
しかし、取り上げる内容は毎度適当に選んでしまっていたので、「もう少し体系的にまとめられていたほうが読むほうも理解が深まるんじゃないかなぁ」などと思っておりました。
そこで今回から、調理師専門学校などで広く教科書として使われている「調理と理論」から、ざっくりポイントをまとめてみようシリーズをやっていきたいと思います。
第一回目は「穀物の調理」についてです。
穀類とは?
まず穀類(穀物)とは一体何ぞやということなのですが、デンプン質から成る食用の種子のことをいいます。
ですから、ジャガイモやサツマイモも同じでんぷん質が主体の食材ですが、これらは地下茎や根に分類されるので穀類ではなくイモ類の位置づけになります。
具体的な穀類の種類をあげると、
- 米
- 小麦
- えん麦
- おおむぎ
- ライ麦
- あわ
- きび
- そば
- はと麦
- もろこし(こうりゃん、ソルガム)
- とうもろこし
- ひえ
などが主なところです。日本では米と小麦がダントツで多く消費されているので、米と小麦を主穀と呼び、それ以外を雑穀と呼んでいたりします。
また、米と小麦以外の雑穀はほとんど馴染みがないと思いますが、実は意外と生活の中で口にされています。
例えば、
- えん麦:オートミール、クッキー
- おおむぎ:麦飯、麦茶
- ライ麦:パン
- あわ、ひえ:米に混ぜ込む用、餅、菓子類
などと直接調理されたものを食べる機会は少ないものの、加工されて使われていることが多い食材なんです。
穀物調理の基本
1. 加熱
穀類を調理する際にはほぼ例外なく、水を加えて加熱します。ご飯やパンも水を加えてから加熱してはじめて食べられるようになりますよね。というのも、穀類の主成分であるデンプンは生の状態だと、
- 消化酵素の働きを受けにくく、消化が悪い
- 味覚的にもおいしいと感じにくい
という性質を持っているためです。
これは生のデンプンが水となじみにくい構造をしているために起こる現象です。例えば、片栗粉(デンプン100%)を水に溶いて数分放置したことのある方ならわかると思いますが、完全には水に溶けずに、しばらくすると下に沈殿して分離しちゃいますよね。
同じように米や小麦粉に含まれるデンプン質も、加熱する前は水となじみにくい状態にあるわけです。
水となじみにくいということはつまり、同じ水分である唾液もなじみにくいということなので、デンプンの消化酵素であるアミラーゼも然り、味覚を舌に伝えるのもまた唾液が役割を担っていますから、役割が果たせず消化不良や味の低下に繋がってしまうということです。
ちなみに生の状態のものと、15分加熱した状態のものの消化率の変化を調べた研究によると、
- もち米:10%→52%
- うるち米:15%→54%
- コーン:14%→61%
- 小麦:3%→54%
生炊きになった米や、半生のパンや天ぷらがマズいことは周知の事実かと思いますが、それだけではなく消化不良でお腹まで壊してしまいかねないというわけです。穀物を調理するときは注意したいものですな。
また加熱するときに水も一緒に加えるのは、熱によって組織が緩んだところに水を入り込ませることで、膨張させ柔らかくする効果があります。
2. 保存
硬いデンプンが水を吸って柔らかい状態になることを糊化といいますが、この糊化したデンプンは時間を置くと、元の硬い状態に少しずつ戻っていってしまいます。
これを老化と呼びます。炊いた米を冷蔵庫にしばらく入れておくと硬くなったりカピカピした状態になると思いますが、これがデンプンの老化です。
デンプンが老化するともちろん味は落ちてしまうので、できる限り食い止めたいところですよね。実はこの現象、調理後の保存状態によっていくらか食い止めることが可能です。
具体的には、
- 食材の水分含有量
- 保存温度
- 同時に存在する物質
をコントロールすることによって、デンプンの老化が進むスピードを遅らせることができます。
食材の水分量に関しては、
- 30~60%のときに最も老化が起きやすい
- 10%以下のとき、もしくは60%よりも水分量が多いときは老化が起きにくい
と言われています。
米飯の水分量が約60%、パンが35~38%なことを考えると納得の数字ですね。
なので、せんべいやパン粉など水分を除いて乾燥させた状態で保存、もしくはおかゆとか水分の多い状態で保存することで老化を防いでくれます。しかし、元の状態とはかけ離れてしまうため、調理したものをそのままの状態で保存したい場合には不向きですな。
そこでデンプンの老化を防ぐ方法として最も手近なのが、保存温度を管理する方法であります。
具体的には、
- 0℃~10℃
の範囲で最も老化現象が進んでしまうので、保温、もしくは冷凍するのが良いとされています。冷蔵庫の温度はちょうどこの0℃~10℃の温度帯にあるので、調理した穀物を保存しておくには最悪な環境なわけですね。
ですので冷蔵庫に入れるぐらいだったら、炊きあがった米とかであれば保温しておいたり、冷凍して食べるときに温め直す方がおいしく食べられるわけです。
しかし冷凍する場合はどうしても、食材が温かい状態から0℃~10℃の温度帯を通過して凍らせるので、若干の老化は免れません。
また、水和性の高いものを一緒にしておくことでも老化を食い止められます。水和性が高いものとはつまり、水分を吸収しやすいものってことです。
例としては、砂糖なんかが代表的なことろです。ぎゅうひの生地に砂糖を混ぜ込むと硬くなりにくいと言われているのはこのためですね。
原理としては、砂糖などの水を吸着しやすい物質が水分を奪うことで、デンプンを含む食材の水分含有量が減って結果的に乾燥するというものです。
ちなみにですが、どうしても老化してしまい硬くなったデンプンも、再度加熱すれば糊化して柔らかくなります。冷ご飯を温めたり、餅を焼くと柔らかくなる現象ですね。しかし、糊化している状態は、一度老化する前と比べてあまり長続きしないのでその点ご留意のほどを。
米の調理~炊飯の理論
米を炊飯して調理するとき、他の穀物と同様に水を加えて加熱するということは同じです。基本的な手順としては、
- 米を洗う
- 水加減をする
- 吸水させる
- 加熱する
という工程をたどります。具体的な米の炊き方については過去にも触れていますが、それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 洗う
この工程は精白米の表面についている糠やごみを取り除くために行われます。ただ、最近は精米の技術が向上して付着している糠の量も数%ほどしかないため、サッと水で数回ゆすぐ程度で良いとされています。
米を洗うとき、少量の水を加えてシャカシャカとかき混ぜながら米粒同士をこすり合わせるような「米を研ぐ」操作をしている人も多いと思いますが、それは一昔前の糠が米に2~3割ほども残っていた時代にやる工程なわけです。
逆に思い切り力を入れて研いでしまうと、米粒が欠けてしまい、表面の細胞の成分が抜け落ちて柔らかめなごはんになってしまいます。
無洗米のように嗜好面ではほとんど差がないにもかかわらず、洗わなくても良いものも生産されていますが、汚れは多少ついているのでサッと洗った方が無難でしょうね。
また、米は水分含有量が少なく吸水が素早く起こります。具体的には、洗米中に米の約8~10%の吸水が起こるので、多少なりとも糠の含まれた水を吸水させないために、最初に加えた水はすぐに捨てて、すぐに新しい水に変えたほうがベターです。
2. 水加減
水加減によって炊き上がりの米は、「飯」と「かゆ」の2種類に大別されます。具体的に、
- 飯とは、加えた水が完全に米粒に吸収されている状態
- かゆとは、余分な水が残った状態
を指します。かゆではなく飯の状態にするには、適量の水を加える必要があります。
そして、おいしく炊き上がった米というのは、米の重量が元の2.1~2.3倍程度といわれているので、飯は米に対して1.1~1.3倍の水が吸収された状態のものというわけです。
そこに炊飯中の水分の蒸発分を差し引くと、一般的な炊飯の水加減というのは、
- 元の米の重量に対して1.5倍
- 体積で考えると1.2倍
が最も丁度良いとされます。
また、米をしばらく水に浸けてしっかりと吸水させたものを水気を切って使う場合、米重量の20~30%の水を吸っている状態なので、
- 浸水米の重量に対して1.1~1.2倍
- 体積で考えると0.9~1倍
の水加減にする必要があります。好みの問題もありますから、この辺の値をガイドラインとして硬めにが好きだったら少し水分量を減らして、柔らかめが好きなら少し多めに入れると良さそうですな。
ちなみに無洗米の水加減ですが、糠の付着がゼロで実質的な米の量が多くなるため、気持ち水の量を多くするか米の計量を若干少なくすると良いかもしれません。
3. 吸水&浸水
米のデンプンがしっかりと糊化して柔らかく粘り気のあるものに仕上げるには、十分に吸水をさせる必要があります。
実際、まったく吸水を行わずに加熱を始めると芯の残ったご飯になってしまいます。
通常の水道水の温度である10~20℃の水温で米を吸水させた場合、約30分で飽和状態の50%の吸水が起こるので、最低30分は水に浸けて加熱をしたいところ。
市販の炊飯器で通常炊きをすると、この吸水時間も考慮して炊飯してくれるのであまり考えなくても良いですが、土鍋で炊く場合や炊飯器の急速モードで炊く場合はこの時間の浸水時間は確保してから加熱したいですね。
また、浸ける時間が長すぎる場合(15時間以上)、
- 米周囲の過度の膨潤
- 食味の低下
- 成分の流出
- 微生物の繁殖
などの弊害があるので、15時間以上の浸水もできるだけ避けたほうがいいでしょう。
ただ、別の研究によると5℃で2時間という低温&長時間の浸水をすると、柔らかさや粘り気の向上、さらに老化のスピードが減少したという報告もあるので、試してみても良いかも。
4. 加熱
米の加熱過程は次の4段階で行われます。
- 温度上昇期
- 沸騰期
- 蒸し煮期
- 蒸らし期
第一の温度上昇期は、米と一緒に加えた水が沸騰するまでの期間です。
この時期に米はさらに吸水し、温度が60℃になるとデンプンの糊化が始まります。
また、この時期に米粒内に含まれるアミラーゼ群やグルコシダーゼなどの酵素が働き、糖が生成され甘味が出ます。
なので、この時期の時間の長短が米の仕上がりに大きな影響を及ぼします。詳しく書くと、
時間が短すぎる場合は、中心部まで吸水が十分に行われる前に外側が糊化してしまい中心まで水分が行きわたらず、芯のある米に
反対に時間が長すぎる場合、水が沸騰する前にほとんどの水が吸水されてしまい、対流が起こらず、鍋内の温度が不均一になります。その結果、上部と下部の硬さがバラバラなって炊きムラができてしまいます。
具体的には、8~15分の時間をかけて沸騰させると仕上がりが良くなると言われています。中火から強火にするのが推奨されています。
第二の沸騰期では、前述の通り鍋内で対流が起きて、鍋全体の温度を一定に保っています。なので、この時期の温度が低く、対流がうまく起きないと仕上がりは良くなりません。
ここの時期は約5分です。火力は弱中火といったところです。
第三の蒸し煮期ではすでに水分が米粒に吸収され切っています。しかし、デンプンの糊化はまで進行中なので、温度は高く保つ必要があります。ただし、液はもう残っていないため、焦げないよう弱火にする必要があります。時間にして10分以上です。
ちなみにガスコンロなどで米を炊く際、土鍋や厚手の鍋が推奨されるのは、保温力が高くこの時期に弱火にしても温度が下がりにくいためです。
それでも短時間一時的に火力を強くするなどして温度が下がらないようにするとよりおいしいご飯が出来上がります。
第四の蒸らし期は、加熱終了後に米粒周囲にまだ付着している水分を米粒の中に完全に吸収させる時期です。蒸らしを行わない場合、水っぽく、水分の分布も不均一です。
ただし、この蒸らし期も時間が長すぎると温度が下がり蒸気が鍋肌に凝縮し、ごはんに再度付着して水っぽくなるので、長すぎるのも良くありません。
具体的には、気温などの影響するが、ご飯と鍋内の温度が90℃以上に保たれている15分程度が目安です。
もち米の調理
普通ごはんというと茶碗で食べる粘り気の少ないうるち米を指しますが、粘り気が多いもち米も忘れてはいけません。
両者の違いは含まれるデンプンの種類の違いです。
うるち米のデンプンは、粘り気の少ないアミロースが20%含まれていますが、もち米にはアミロースが含まれておらず、粘り気のもとであるアミロペクチンが100%含まれています。
アミロペクチンは粘り気が多いだけでなく、
- 糊化しやすい
- 老化しにくい
- 吸水しやすい
という性質も持ち合わせています。
そのためもち米を調理する際は、うるち米を調理するときとは異なる水分量よし&加熱方法で行わなければなりません。
具体的には、炊飯後のうるち米が2.1~2.3倍で最適なのに対して、もち米は1.6~1.9倍の重量に出来上がりを調節すると程よい硬さになるのでこれを目指します。
そのための水加減としては、蒸発分を考慮して米の重量に対して0.7~1倍の水加減にします。また、浸水を行ったもち米は30~40%吸水しているので、浸水米をもとに考える場合0.3~0.7倍の水を加えるようにしましょう。
そして加熱の方法ですが、一般的な炊飯方法で行った場合、吸水が急速に起こるため、加熱の途中で上部の米は水の上に出てしまって炊きムラができてしまいます。なので、もち米のみを調理する場合は、蒸す方法を取ります。
ただ、うるち米を20%ほど加えた場合は普通の炊飯器で酢移管することも可能です。その場合は、
- もち米の重量×1.0 + うるち米の重量×1.5
の計算式に当てはめた水分量で行うとうまくできます。
小麦粉の調理
1. 小麦粉の使い分け
他の穀類と同様に小麦粉の主成分もデンプン(≒炭水化物)なのですが、小麦粉の特徴としてタンパク質が他の穀物と比べて多く含まれています。
小麦粉のタンパク質はグルテニンとグリアジンの2種類で約85%を占めており、それぞれ水を加えてこねると、
- グルテニン:弾性の強い塊になる
- グリアジン:粘着力が強く糸状に伸びる
という性質があります。そして、この2つが引き合い網目構造を作ることによって、粘弾性の高いグルテンという物質に変化します。
小麦粉調理ではその性質を利用して、CO2を包み込んだり、伸ばしたり広げたりして他の食材を包んだりと幅広い用途に使われます。
また、小麦粉の種類によってタンパク質含有量が違っており、用途に応じて使い分けされています。
具体的には、
- 強力粉(タンパク質11~13%):食パンやフランスパン、ピザなど
- 準強力粉(タンパク質10~11.5%):中華麺、餃子や焼売などの皮、菓子パンなど
- 中力粉(タンパク質8~10%):うどんやドーナッツなど
- 薄力粉(タンパク質7~8%):菓子類や天ぷらの衣など
といった具合で使い分けされています。
ちなみにそれぞれのグルテンの形成される量に関しては、小麦粉100gあたり、
- タンパク質含有量が多い強力粉で35g程度
- タンパク質含有量が少ない薄力粉で25g以下
と強力粉と薄力粉では、小麦粉の総量に対して約10%ほども違いがあります。
そのため、タンパク質含有量が多いものほどグルテンが強靭でもちもちとした食感を出したい料理に使用され、逆に少ないものほどモチモチ感ではなくサクサク感を出したい料理に使用されます。
もしこの使い分けをしないで小麦粉を選んでしまった場合、
- 薄力粉ではなく強力粉を使ったケーキ:ふんわりとしていないボソボソと硬い食感に
- 強力粉ではなく薄力粉を使ったパン:もちもち感のないパサパサしたものに
2. こね方と放置時間
グルテンはこねることで多く形成されますが、実はこねればこねるほど粘弾性が増加するというわけでもないのが難しいところ。最大までグルテンができた状態で過度にこねてしまうと、一度できた網目構造が今度は破壊されて、逆に粘弾性が低下してしまいます。
最大までグルテンができる状態というのは、
- 小麦粉の種類
- 水温
- こねる力&速度
などによって時間が変わってくるのですが、強力粉と薄力粉をこねる時間とそのときの粘弾性を調べた実験によると、
- 強力粉:約6~18分
- 薄力粉:約2~4分
の間でこねたときにグルテンの量が最大になり、それ以上こねると粘弾性が減少していくようです。
なので、こねる時間は薄力粉だと4分、強力粉だと6分前後というこね時間がひとつのガイドラインになりそう。
しかし、天ぷらの衣などグルテンを多く出したくない場合は、どちらの小麦粉を使うにせよ、こね始めて1分もたたないうちにグングン粘弾性は増していくので、そういう料理を作る場合は素早く短時間で仕上げることが大切です。
ちなみに強力粉と薄力粉で時間の差が大きいのは、おそらく強力粉ようなグルテンが大量に形成される種類のものだと、こねるにしたがってこねる力も強く必要になり、グルテンを十分に形成するのも破壊するのにも時間と力が必要になるためだと思われます。
また、こねた後にしばらく放置することによって小麦粉の生地が伸ばしやすくなることも分かっています。
例えばドウを60回こねたあとの放置する時間によって、「生地を伸ばすために必要な力」と「実際にどれだけ薄く延ばせたのか」を調べた実験によると、
- 60回手ごね直後は明らかに伸ばしにくくなり、いくら伸ばしてもそれ以上薄く伸びない
- 5分寝かすだけで、伸ばしやすさが約2倍に跳ね上がる
- 30分寝かすと、伸ばすのに必要な力が減るだけでなく、手ごねした直後のものと比べて3倍ほどもさらに薄く伸びた
ということが判明しています。
ドウをこねて薄く延ばそうとするときに寝かさずに行ってしまうと、いくら伸ばしても元の厚さに戻ってしまうという現象が起きるわけですが、5~30分寝かすことによってスムーズに生地が伸びてくれるんだと。
パンを成形するときにこねた後休ませたり、麺打ちのときにこねては休ませこねては休ませするのはこのためなんですな。
3. 水と添加物
●水
ドウを作るときにまず欠かせないのが水ですが、水の加え方によってグルテンの形成加減が変わってきます。具体的には、
- 一度に全部を加えて混ぜるか
- 少しずつ何回かに分けて混ぜながら加えるか
によってグルテンの形成に違いが出てきます。
この場合、少しずつ加えたほうがグルテンがよく形成されることが分かっています。
また、水温についてですが、
- 温度が高いほど速く吸水し、グルテンの量と粘弾性が増加する
- しかし、70℃よりも水温が高くなるとデンプンの糊化とたんぱく質変性が起こりグルテンがよく形成されない
- 反対に低温だと吸水が悪く硬くなる
- 低温の水で柔らかい生地を作るには水の量を増やす必要がある
ということが分かっています。
天ぷら衣を低温の水で作ったり、パンに加える水温を少し高めにしたりするのはこういった理由があるわけですな。
●食塩
食塩を加えることによって、グルテンの粘弾性の元であるグリアジンの粘性を強めることが分かっています。
ハンバーグ作るときのミオシンとアクチンの性質とも似たとこがありますな。
具体的には、食塩を1~5%加えることによって伸長度(どれだけ薄く伸ばせるか)と伸長抵抗(伸ばすのに必要な力)が増加します。
つまり、塩を加えることによって生地に弾力が出て伸ばしにくくなる代わりに、もちもち感が増し、さらに塩を加えない場合と比べて薄く延ばすことも可能になるわけです。
塩を加えるとグルテンが増加して生地が強くなるのは何となく分かりますが、結果的に薄く伸ばすことができるというのは驚きですな。
●砂糖
砂糖を小麦粉の生地に加えることによる効果として大きいのは、グルテンの形成が抑制され粘弾性の減少が起こることです。特に小麦粉に対して30%以上の割合の砂糖を混ぜたときにより顕著になります。
これは砂糖にある親水性という性質のためです。親水性とは、読んで字のごとく水と親しみやすい性質、つまり水と結びつきやすい性質のことです。
グルテンは水を加えてこねることにより形成されますが、砂糖と水を一緒に加えることにより砂糖が本来小麦粉と反応するはずだった水を奪うので、結果グルテンが形成されにくくなるわけですね。
なので、もしグルテンを出してもちもち感を出したいのだが、同時に甘さも欲しいので砂糖も入れたいという場合には、加える順番を考える必要があります。
つまり、小麦粉に水を加えて十分にこねてから砂糖を加えればいいわけです。それにより、砂糖と水が結びつく前に、小麦粉と水が十分に反応するのでグルテンが形成されるのを邪魔されないわけですね。
●油脂
油脂も砂糖と同様にグルテンの形成を阻害します。
これは油脂が小麦粉のタンパク質であるグリアジンとグルテニンをコーティングするために起きます。グリアジンとグルテニンの2つのたんぱく質が結びついてはじめてグルテンになりますが、油脂が邪魔してグルテンが形成されにくくなるわけですね。
なのでこれまた砂糖のときと同じように、先に小麦粉と水でこねた後に油脂を入れることにより、グルテンの形成が阻害されるのを防ぐことができます。
また、油脂を加えることにより伸展性が増し、なめらかな生地になることも分かっています。
●アルカリ性物質
小麦粉にアルカリ性の水を加えてこねることにより、グルテニンに作用して伸展性が増します。
中華麺にかん水(炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどの水溶液)を加えたり、蒸しパンや中華まんに重曹(炭酸水素ナトリウム)を加えるのはこのためですね。
4. 加える水の割合
小麦粉に水を加える場合、調理の目的に合わせて加える水の割合も変える必要があります。
例えばパンを作りたいのに、天ぷらの衣のようにシャバシャバにしてしまうと、いくらこねてもまとまらないですよね。
同じように、何を作るのかによって最適な水の割合というのが存在します。
あくまで目安ではありますが、小麦粉に対する水量の適正値をざっくりとまとめてみると、
- 0.5~0.6倍→パン、クッキー、ドーナッツ、まんじゅうの皮、餃子の皮など(手でこねられる硬さ)
- 0.65~1倍→ロックケーキなど(手ではこねられないが流れない硬さ)
- 1.3~1.6倍→ホットケーキ、バウンドケーキ、カップケーキなど(ぼてぼてしているが流れる硬さ)
- 1.6~2倍→天ぷらの衣、スポンジケーキ、桜もちの皮など(つらなって流れる硬さ)
- 2~4倍→クレープ、お好み焼きなど(さらさら流れる硬さ)
といった具合。パンや餃子の皮では成型のしやすさと伸ばしやすさから加える水を小麦粉の50%ぐらいにし、ホットケーキなどでは天板の上になめらかに流れる硬さになるよう小麦粉の1.3~1.6倍にするなどしています。
また、加える副材料にも多くの場合水分が含まれているので、混ぜ込む材料が生地に与える影響も知っておくとなお良いでしょう。
小麦粉に混ぜる代表的な材料でいうと、
- 牛乳:90%
- 卵:80%
- バター:70%
- 砂糖:30~60%
どうぞよしなに。
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