面倒な下茹で一切なし!簡単にしみしみの大根を作る方法


味がしっかり染み込んだ大根の煮物って美味しいですよね。
ですが味を染み込ませようと長時間煮込んでしまうと煮崩れを起こしてしまうし、だからといって煮込む時間を少なくしてしまうと中まで味が染みないですよね。

そこで、ただ煮汁で煮るだけで、煮すぎることなくしかも中までしっかり味の染みた大根を作るための方法をご紹介いたします。

いかにペクチンを溶かすか

そもそも大根に味が染みるのは、加熱によって細胞と細胞の間に隙間ができ柔らかくなったところに調味料が行きわたるからです。

これは植物の細胞はペクチンという接着剤のようなもので普段は固められているのですが、温度が上がることでこの接着剤が水に溶けて細胞がゆるゆるになるために起こります。

大根をコンクリートに例えると、ペクチンというセメントの役割をしているものがどろどろに溶けて、コンクリートの形を維持できなくなるようなものです。

つまり、大根に味が染みる過程は、
  1. 大根を加熱
  2. 細胞同士をつなげているペクチンが煮汁に溶けだす
  3. ゆるゆるになった細胞の隙間に調味料が侵入
みたいな流れですね。

味が染みないからと言って長時間加熱すればするほど、内側はペクチンがあまり溶けだしていないので味が染みず、外側だけペクチンが溶けている状態なので味は染みていないけど煮崩れするみたいな状況になるわけです。

なので、いかに内側のペクチンを煮汁に溶かすことができるかを考えることが大根の味を染みやすくさせるコツであります。

冷凍する

結論をまず書いてしまうと、カットした大根を生のまま冷凍してそのまま茹でる方法です。

ある実験(1)では、レンコンを使って、
  1. 水煮
  2. 水+酢で煮る
  3. 冷凍+自然解凍
  4. 冷凍+水煮解凍
  5. 水+重曹で煮る
のものをそれぞれ用意してペクチンの量を比べました。ペクチンの含有量によって柔らかさを調べたわけですな。

レンコンも大根と同じくペクチンで固さを保っているので、構造的に違いはあんまりないんじゃないかと思います。

ちなみに煮る時間は10分とそこまで長くありませんので、完全に柔らかくしてしまっているわけではありません。

結果、おおざっぱに何が分かったかというと、
  • 水煮、酢煮、自然解凍はほぼ同じぐらいの柔らかさ
  • それに比べて明らかに冷凍したあと茹でたものは柔らかくなった
  • それよりもさらに重曹で茹でたものは柔らかくなった
といった感じ。

具体的にどれぐらい柔らかくなったのかというと、
  • 冷凍して茹でたものは、水煮に比べて約1.6倍柔らかくなった
  • 重曹で茹でたものは、水煮に比べて約5.3倍も柔らかくなった
そうです。

この結果だけ見ると、「重曹めっちゃいいじゃん!」となりますが、あまりに早く柔らかくなりすぎるためおすすめはしません。

この実験では茹でる時間は10分でしたが、完全に柔らかくするにはもう少し煮ないと中まで柔らかくはなりません。

重曹で柔らかくなると言っても、作用するのは野菜の外側→内側の順番です。
内側と外側でペクチンの溶けだす量に差が出るために、大根の内側のペクチンが溶けだして柔らかくなるころには、外側のペクチンはさらに溶けだしており煮崩れてしまいます。

細胞壁を壊す

対して、冷凍したものがなぜ良いのかというと、野菜の内側と外側で差がないからです。

冷凍したあとに茹でると何が起きるかというと、緩慢冷凍&急速解凍によって細胞が壊れます。
冷凍や解凍によって食材の細胞が壊れるというのは聞いたことがあることと思います。

冷凍食品製造業者のように急速冷凍庫を持っているのなら話は別ですが、家庭用の冷凍庫程度の温度で食材をゆっくり冷凍してしまうと細胞は壊れます。
さらに、肉や魚を電子レンジなどで急速解凍したときにドリップが出てしまうのと同じで、冷凍したものをお湯で茹でると急速に解凍されて、これまた細胞が傷つきます。

ペクチンは細胞と細胞の間だけでなく、細胞の中にも存在しているのですが、冷凍された大根をそのまま茹でると大根の細胞壁が破壊され、そこからペクチンがゆで汁に流出します。

重曹で茹でるときのように外側から徐々に作用するのではなく、冷凍すると食材全体の細胞壁が壊れて均等にペクチンが流出しますので、
  • 外側が火が通っているのに中がまだ硬い
  • 内側に火が通ったが外側はぐずぐずに煮崩れた
みたいなことが防げるわけです。

もっと言うと、内側と外側のペクチン流出量がほぼ均等になるということは、調味料が染み込むのも内側と外側であまり差がなくなるわけです。

つまり冷凍したまま茹でることで、大根の内側も外側も一緒に柔らかくなりやすく、調味料が染み込む時間差も少ないので、中まで味が染み込むのにも時間がかからないというわけです。

というわけで、大根の煮物を作るときは、「生の大根を冷凍してそのまま煮汁で炊く」というのをやってみてくださいませ。

どうぞよしなに。

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