ナスの煮浸しには、油を使ったほうが美味しい理由


夏の定番のナス。煮浸しや麻婆などお酒にも合うし、ごはんにも合うしで最高の食材ですよね。

そのときに、油で炒めたり揚げたりしたほうが美味しいと聞いたことのある人は多いと思うんですけど、油を使うのを省略しちゃうときってありませんか?
煮物なんかを作るときは特にだと思うんですけど、揚げたり炒めたりっていう工程がなんか煩わしく感じちゃうのは分かります。

しかし、必ずしも炒めたり揚げたりと事前に油で加熱する必要はありません。でもナスを料理するときは断然油を使った方が美味しいので、その理由を食用油との関係性の研究から(1)解説いたします。

渋みが抑えられる

実験としてまず、
  • 油を加えて煮たナス
  • そのまま煮たナス
を用意して、それぞれどのくらい渋みが出たのかを検査しました。
煮汁は出汁と薄口醤油だけのシンプルなものです。ちなみにこのとき油を使った方は煮汁に油を入れただけと事前に加熱はしておりません。

結果、
  • 油を加えて煮たナスはそうでないものに比べて、約3.7倍の人が渋みが少ない
と評価したそうです。

意外なのは、事前に炒めたり揚げたりすると美味しいということはよく聞きますが、油を加えた煮汁で煮るだけで効果があったということですね。

ポリフェノールの量は違いなし

ナスの渋みはそもそもクロロゲン酸というポリフェノールの一種がもとです。水などにさらしてアク抜きをするときは、この成分を抜くためだったりします。
コーヒーの苦み成分として有名なものですが、脂質の腸内吸収を抑えて総コレステロール値を下げてくれたり(2)と油を使うナスにとっては含まれていて嬉しい成分ですね。

油を使ったナスは渋みが少なくなるということは、このクロロゲン酸の量も減っちゃったんじゃないの?と心配する人もいると思います。

しかし、実際は油を使おうが使わまいがこのクロロゲン酸値、もっと言えば茄子の皮などに多く含まれるアントシアニンなどその他のポリフェノールの量も大差なかったそうです。

油が渋みをマスキングする

じゃあどうして油を加えるとナスから渋みを感じにくくなるの?というと、まず渋み成分であるクロロゲン酸が油に溶けたのが理由だと研究者は説明しております。

人間が味を感じるためには、味のもととなる成分が水に溶けて舌を刺激しなければなりません。クロロゲン酸は一般的に水溶性であることが知られていますが、実は同時に脂溶性の成分でもあります。

研究者曰く、

食用油調理では、食用油との共存により水溶性の渋味成分は一部、食用油へ溶解移行すると考えられる。したがってナス料理自体に含まれる渋味成分量に変りはなくても、食用油調理を行ったことによりナスに付着した食用油が一部の渋味成分を取り込んだ形となる

とのこと。つまり、油が渋み成分を覆い隠すことによって舌に渋み成分が触れなくなったんだと。

また、今度は

  • 食用油
  • カフェイン酸溶液(クロロゲン酸の渋みの原因となる成分)
を別々に摂取してもらうという実験をしてもらったところ、やはり渋みの感じ方は弱くなったそうです。

このことから、ナスに油を加えると渋みが感じられにくくなるのは、舌に油の被膜ができて渋み成分が舌と触れ合わなくなったからだ、ということも分かりました。

どちらにせよ、渋み成分の量自体は変わらないが、油によって渋みが感じにくくなるということらしいですね。


色が良くなる

油を入れずに調理するとさらに、色が悪くなって見た目も美味しそうではありません。

これはナスのきれいな紫色はアントシアニン系のナスニンと呼ばれる水溶性の色素によるものだからです。

長時間加熱すると、煮汁に色が溶けだしてしまい汁もナス自体もどちらも色が悪くなってしまいます。

ところが、ナスの表面に油があることにより被膜ができ、水溶性の成分が溶けだすのを防いでくれるので色が悪くなりずらいというわけです。

時期による違い

最近のナスは品種改良されているので、そこまでアクは強くありません。なのでそんなに苦みは気にしなくていいんじゃないかという人もいます。

確かに油を使った場合、苦みが少なくなり、甘味も増すということが分かっておりますが、逆に油を使うと少しうま味が減るということも分かっていて好みの問題もあるでしょう。

6月ごろに出回るものは特にアクが少なくてそこまで気にしない人はそれでもいいかもしれません。

しかし、8~9月ごろのナスになると露地栽培されることが多く、アクも強いものが多いので、苦みを強く感じやすいです。

また、ナスのアクの成分であるクロロゲン酸は苦みを感じさせますが、少量だと酸味に変わることもあります。なので、コーヒーが酸っぱいと感じるのはこのクロロゲン酸の量が少ないものですな。

ですので、
  • アクはあまりなくても、酸味をちょっと感じるかもしれない
  • うま味を重視、苦みや酸味は多少あっても良い、色はあまり気にしない、のであれば油は使わなくても良いかも
  • 初夏から秋にかけてはアクが強く苦みが強く感じられる
ということを考慮したうえで、個人的にはやっぱりナスの煮浸しには油を使っいたいな、と思う次第です。

どうぞよしなに。

コメント

  1. けいたろう
    油を入れる効果がよく分かりました。ありがとうございます。

    返信削除

コメントを投稿

人気の投稿