心理学から考える料理と酒のマリアージュの科学


料理と飲み物の組み合わせが良いときには、「マリアージュが良い」といった表現が使われますが、料理と酒のマリアージュを決めるのってなかなか難しいところがありますよね。

実際に飲み食いして試してみないと分からないこともあれば、単なる個人の好みで決まる場合もありますからね。

一般的には、

  • 産地が一緒のもの同士を合わせる
  • 対極の味のものを合わせる
  • 似た味のものを合わせる
などと言われてはおりますが、個人的にはなんかピンと来ないところがあるわけですよ。

産地が一緒のもの同士を組み合わせたところで、同じ性質の土壌で育ったとは限らないわけだし、
味で決めるって言っても味は見た目じゃわかりませんからね。実際に味わって決めようとしたときには時すでに遅しなわけですよ。

ところが、実際に味の相性が良いかどうかではなく、「みんな割と見た目で味を判断しているよ」という心理学的な研究がたくさんがあるので、意外とマリアージュは見た目だけでも決定することができちゃうわけです。

色彩心理学を使ってマリアージュを決める

色が人間の心や感覚にどう影響しているのかを研究する「色彩心理学」というものがあります。
これによると人間が食べ物のおいしさを五感(視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚)で判断するとき、約87%の情報は視覚から来るものなのだそうです(1)。

つまり食べ物そのものの味や香りよりも、その食べ物がどういう色や形をしているかといった視覚情報のほうが僕らは重視しているらしいんですな。

病院の検尿室で紙コップに泡立った緑茶を注がれることを想像していただけたら、分かりやすいかと思います(例えが失礼致しました…)。

まあ有名なところだとマサチューセッツ大学アマースト校が行った実験(2)ですかね。
19~50歳の参加者を集めて、5段階の色の濃さで赤く染色した砂糖水を用意してそれぞれどれぐらい甘さを感じたかを調べるというもの。

結果、色が濃くなるほど砂糖が多く入っていると感じる傾向にあるとのこと。
味が変わらなくても、食べ物の色だけで味覚に影響を与えるとは驚きですねえ。

似た色のもの同士が料理と酒を調和させる

では、どのような色のもの同士を合わせればおいしさを感じやすいのかというと、
それは似た色のもの同士です。

20歳前後の日本の男女を826人集めて料理の色の組み合わせと好みを調査(3)したところ、
やはり似たような色の配色同士は好まれる傾向に。

これはどうして起きるのかというと、似た色のものは「同系色調和」「類似色調和」といった形で料理の色合いに安定感が出て、見ている人に安心感を与えるためです。

例えば、少し黄色く色づいた白ワインや日本酒の色と、天ぷらなどの黄色っぽい色の濃淡が引き起こす同系色調和。
あとは、赤ワインの濃い赤とミディアムに焼き上げられたステーキの淡いピンク色と表面の茶色などの似通った色同士による類似色調和ですね。

そう考えると、
  • 赤ワインに牛肉やラム肉
  • 白ワインに鶏肉や豚肉、魚
  • 日本酒に刺身や天ぷら
などは理にかなっているわけですな。

他にも色で考えたとき、例えば
  • 赤ワインと鮪の刺身や麻婆豆腐
  • 白ワインと豆腐や白身魚
  • 日本酒とチーズ
なども意外に合う関係です。
これは料理と酒の味の相性が実際良いかどうかは問題でなく、似た色同士のものは合うと脳が錯覚しているがために起きるのです。

色で料理に合う酒を決めるというのはシンプルで使いやすいルールだと思うので、今日の酒と肴に迷ったときは是非思い出していただけたらと。

どうぞよしなに。


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