腐りやすい刺身をできる限り日持ちさせる2つの調理法
せっかくのお刺身がちょっと食べきれなくて余ってしまったために、火を通して食べなくちゃいけないなんてのも、もったいない気持ちになります。
そんな時に「もうちょっと長持ちしてくれたらいいのに!」とか思ったことはないでしょうか?
そんな時に役立つ調理法を今日は2つご紹介いたします。
「昆布締め」によって水分活性を低くする
まずは「昆布締め」です。
これは刺身、もしくは刺身にする手前のサクの状態のものを乾いた昆布で挟む手法です。
日持ちの効果だけでなく、昆布のうま味が魚に移ることによるうま味の相乗効果も期待できるのやって損はありません。
具体的には、
- 用意した魚の切身に薄く塩をする
- 昆布に切身を乗せ、さらにもう1枚上から昆布で挟む
- ラップでくるみ、4時間~24時間冷蔵庫の平らなところで保存して、そのあと昆布は外す
といった具合。魚に昆布の色が移り、飴色になっていればOKです。こうすると、3~4日は刺身としておいしく食べられます。
江戸時代に現在の富山で生まれた魚の保存方法ですね。
なぜ昆布に挟むことで魚が傷みにくくなるのかというと、昆布によって魚の水分活性が低くなるからであります。
水分活性とは簡単に言うと、水分の含有量のことです。
食材の水分は厳密には「結合水(細胞と分子レベルで結合している水)」と「自由水(細胞と結合していない水)」に分けられるのですが、食材に含まれる自由水の割合が低いときに水分活性が低い、といった言い方をします。
そして食材はこの自由水が多く含まれているほど腐りやすいわけです。
昆布を水に浸しておくと水分を吸って柔らかくなりますが、同じことが魚を挟んだときにも起こります。
魚に含まれる水分が昆布に移動して、魚に含まれる自由水の割合が減るために腐りにくくなるのです。
「酢締め」によって菌を減らす
次に「酢締め」です。
文字通り魚を酢につけるわけですが、この場合も一度塩をすることをおすすめします。
やり方としては、
- 魚の切身を用意し、裏表に塩をして30分ほど置く
- 少量の酢で塩を洗い流す
- 魚を酢に浸け5分ほど表面がほんのり白くなるまで浸ける
- 酢をきり、キッチンペーパーで水気を拭き取る
といった感じです。3~4日は日持ちするでしょう。
なぜ塩をするのかというと、魚のたんぱく質はそのままだと酸性やアルカリ性の液に浸けたあとに水分を吸収してしまう性質を持っているからです。食感も柔らかくてあまりおいしくありません。
しかし、魚のたんぱく質は塩をするとミオシンと呼ばれるものからアクトミオシンと呼ばれるものに変化し、水分を吸収しなくなります。
そうすると、昆布締めと同じように自由水の割合が減り、腐りにくくなります。さらに硬さも出て、食感も良くなりますし一石二鳥です。
そして酢の効果ですが、これも魚が腐るのを防いでくれます。
古い生魚を食べて食中毒を起こす場合、多くは「腸炎ビブリオ」と呼ばれる細菌によって引き起こされます。
主な特徴としては、
- 熱に弱い
- 常温におくと激増する
- 3%程度の塩分濃度を好む
- 真水や酸に弱い
といったところです。刺身で食べたらお腹を壊すのに、火を通したら大丈夫なのは熱に弱い性質をこの細菌は持っているためですね。
そして酢は酸性なので、この腸炎ビブリオを無効化してくれるわけです。
また3%の塩分濃度で一気に増殖するため、最初に塩をするときも、
- 薄く塩をする
- 塩をして長時間放置しすぎない
ということは注意したいところですね。
まとめ
刺身を数日間日持ちさせたいのであれば、
- 「昆布締め」で水分を抜く
- 「酢締め」で細菌を繁殖させない
というのは効果的。
しかし、一回悪くなったものを昆布や酢で締めても意味はないので、短い期間で消費しきれないなっと思ったときに事前にやっておくのが重要です。
どうぞよしなに。
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