購入直後の貝より冷凍の貝を使った方が美味しい料理もあるという話
貝に限ったことではなく、魚介類や肉などの生鮮食品は一度冷凍されて解凍されたものより、購入後すぐに料理に使った方が美味しいと思ってはいないでしょうか?
確かに冷凍されていない新鮮な貝は、みずみずしく旨みもあって美味しいです。対して、一度冷凍されたものは細胞が壊れて味が落ちると思われがちです。
しかし実は冷凍ものも、使う料理によっては購入直後のものよりも料理が美味しくなるということが分かっています。
買ってすぐの貝よりも、冷凍の貝を使った方が美味しい料理
買ってすぐの貝ではなく冷凍物の貝を使うべき料理はズバリ、貝の出汁を味わう料理です。お吸い物、味噌汁、鍋などの汁物なんかが代表ですね。
これはFCG総合研究所の研究(1)によって明らかになっているのですが、一度冷凍された貝を使った料理は、買ってすぐのものを使って調理したものよりも美味しさがアップしたそうな。
ネットの記事でも、貝は冷凍すると旨みが増す!みたいな情報はちらほら見かけるところであります。
このFCGの実験では、
- 購入直後と冷凍後のアサリ
- 購入直後と冷凍後のシジミ
を用意してそれぞれ、貝の代表的うま味成分である
- コハク酸
- 遊離アラニン
- 遊離グルタミン酸
の量を測定しました。冷凍後と前でうま味成分がどう変わるのかを調べたわけですな。
さらにそれぞれを吸い物やだし汁に使ったときの
- 貝単体のおいしさ
- 吸い物やだし汁のおいしさ
も比べてみました。その結果、
- 冷凍後の貝は冷凍前のものと比べて、うま味成分は全て減少していた
- 貝単体で食べた場合も、冷凍後のものは出がらしのようでおいしくないという評価に
- しかし、冷凍後のものは吸い物などにした場合、全体としておいしいと評価する人が多かった
ということが分かりました。冷凍しただけで貝のうま味成分が減少しているのは何でかなー、とも思いましたが、おそらくうま味成分を測定するときに一度解凍してから測定するので、そのときに出たドリップと一緒にうま味成分も流出してしまったのではないかと。
意外なのは、冷凍後のものは貝単体として購入直後のものと比べてうま味成分が少ないのにもかかわらず、吸い物などのだし汁と一緒に食べる料理にすると、全体としておいしいと感じる人が多いということですね。
吸い物などは貝単体のうま味よりも、だし汁に貝のうま味がどれだけ溶け込んでいるかの方が重要だというわけですな。
冷凍物の貝が料理を美味しくする理由
どうしてこんなことが起きるのかというと、冷凍された食材は細胞が壊されしまい、その分うま味成分がだし汁に溶けやすくなるので、うま味を強く感じるのです。
もう少し詳しく言うと、食材はある温度帯(約-1℃~-5℃)のときに品質が最も劣化すると言われております。最大氷結晶生成帯とも呼ばれる温度帯なのですが、家庭用の冷凍庫に食材を入れたとき、食材はこの温度帯をゆっくりと通過します。
この温度帯は食材が凍り始める温度帯で、高すぎず低すぎもしない温度帯なんですね。なので食材の中の水分が凍って出来上がる氷の数は少なく、まだ柔らかい組織も多いんですね。
さらに、出来上がる氷の大きさにも影響します。ちょうど気温が低いときに降る雪がさらさらで粒子が細かいものになりやすく、逆だと大粒の雪になりやすいように、食材の温度が比較的高いと出来上がる氷の大きさも大きくなります。
ですので、家庭用の冷凍庫のようにゆっくりと食材を冷凍するようなものだと、冷凍中の食材の中の氷は大きく、そしてその氷がまだ完全に凍っていない細胞を圧迫するために食材の細胞を傷つけ、さらにその傷ついた細胞から貝のうま味が料理全体に広がるために、結果として料理が美味しく感じるというわけです。
しかし気を付けてほしいのは、冷凍した貝のうま味成分自体は増えるどころか減ってしまうので、酒蒸しなどの貝の身自体を味わう料理では冷凍物は向かないので注意が必要ですな。
どうぞよしなに。
コメント
コメントを投稿