いつもの昆布出汁よりうま味と嗜好性をアップさせる温度と時間


もちろん化学調味料を使った出汁も手軽でいいのですが、和食を本格的に作ろうと思ったら、鰹や昆布を使って出汁を取ると思います。

中でも昆布出汁は料理屋によっても様々な方法で行われていますが、その方法は大きく分けて、

  • 昆布を水に長時間浸けておくだけの「水出し法」
  • 昆布を水から沸騰直前まで加熱して、すぐに引き上げる「煮出し法」
の2つです。しかしここ最近になって、この水に浸ける方法や沸騰直前まで加熱する方法よりも昆布のうま味が抽出される方法が見つかったのをご存じでしょうか?

今回はいろいろな温度と時間で昆布出汁を取って、味がどう変わるのかを調べたものをご紹介いたします。

「60で1時間」がうま味を最大化する

2003年に行われた実験(1)では、昆布を
  • 30℃で30~60分
  • 60℃で30~60分
  • 80℃で30~60分
  • 30℃から始めて80℃までにするのに30~60分
かけて加熱し、うま味成分であるグルタミン酸の量がどう変わるのかを調べました。

その結果、
  • 最もうま味が強くなった方法は、60℃で60分加熱したもの
であることが分かりました。

そして、「30℃の水に昆布を入れて、30分かけて80℃にしたもの」が最もうま味が少なかったようです。

加熱して昆布出汁を取るとき、「水から始めて沸騰直前で取り出す」というのが最も一般的な方法ですが、その方法が最もうま味が少ない結果になったようです。水から入れるのではなく、もう少し高い温度になってから昆布を入れて、その温度を保ったまま長時間やった方が濃い出汁が取れるのですな。

そして実際に試食してみた結果も、60℃で60分加熱したものが最も評価が高かったそうで、従来の方法よりもこちらの方法のほうが昆布出汁が美味しく仕上がるようです。

煮立たせるとうま味が出なくなる

また80℃と高温になると、アルギン酸などの粘り成分が出てうま味が抽出されにくくなるそうです。

カレーのルウや片栗粉でとろみをつけた煮汁で具材を煮ても味が染み込みにくいのと同じですね。昆布の粘り気がうま味の抽出を邪魔するわけです。

「昆布を高温で加熱するとえぐみが出る」と言われることがありますが、実はそれよりもうま味が抽出されないほうが問題のようですね。

さらに昆布出汁を取ったあとはそこに鰹節などを入れて合わせ出汁を取ると思いますが、昆布の粘り気によって鰹出汁までもがうまく取れなくなるのですな。

そう考えると、煮物を作るときに昆布を入れたまま煮込む場合がありますが、それは逆に煮汁に素材のうま味を逃がさないためにやっていることなのかもしれませんね。

ちなみにアルギン酸は70℃以上で抽出され始めるので、昆布出汁を取るときは70℃以上にしないことが重要です。ですので60~70℃の範囲で昆布を加熱すると最も効率よく出汁が取れることになります。

長時間or常温の水に浸けておくのはNG

60~70℃で1時間加熱するのはなかなか大変ですが、水出しだと放置しておくだけでいいので手軽にできますよね。

しかし、
  • 30℃では昆布の臭みが強く出る
という短所があることもこの実験で分かっています。

また1994年に行われた別の実験(2)でも、5~95℃で昆布出汁を取って比べているのですが、
  • 20℃と常温の水で抽出した昆布出汁は最も抽出成分が多かったが、うま味成分は少なかった(つまり、うま味よりえぐみが多く抽出される
という結果が出ております。
常温でしばらく置いておくと、うま味が出るどころか生臭くなってしまうわけですな。

しかし、ちょうど冷蔵庫ぐらいの温度である5℃の水に浸けた昆布は、抽出成分がそれほど多くないにも関わらず、グルタミン酸の割合が多かったそうです。

水出しで昆布出汁を取る場合は必ず低温の水で冷蔵庫に入れる必要があるわけですね。

ただし、浸ける時間が長すぎると同じように生臭さが出てしまうので注意が必要です(3)。

その場合は、10時間が目安で、
  • 3時間だとまだ薄すぎる
  • 24時間だとえぐみが出る
ので丸1日浸けることはしないで、半日程度にとどめておきましょう。

まとめ

昆布出汁を取るとき、
  • 60~70℃の範囲で加熱する
  • その際、水から入れるのではなく60℃ぐらいになった時に入れる
  • 濃い出汁を取りたいのなら、1時間加熱する
  • 70℃以上で加熱すると粘り気が出て、出汁がうまく取れなくなる
  • 逆にうま味の少ない出汁にしたいときや、煮物で素材にうま味を残したいときは高温でやっても良いかも
  • 20~30℃の常温の水ではうま味よりも雑味が多く出る
  • 水出しをするときは5℃ぐらいの低温でやる
  • 水出しの時間の目安は10時間。浸けすぎには注意する
ということを意識してくださいませ。

どうぞよしなに。

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