「冷めるときに煮物の味は染み込む」を科学的に検証した結果

煮物を作るとき「食材には煮汁が冷めるときに味が染みるんだ」ということを聞いたことがあると思います。しかし、本当にそうなのか実際に試したことのある人は少ないんじゃないでしょうか?
- 冷めるときに味が染みるっていうけど、高い温度で煮込み続けた方が味は染みるんじゃないの?
- とか、ゆっくり冷ました時と急に冷ました時では味の染み込み方に違いがあるの?
ということに対する疑問をみていきます。
高い温度で保温したほうがいいんじゃないの?問題
煮汁の中で火が通って柔らかくなる時間よりも、調味料が食材の中まで染み込む時間のほうが短いです。そのため火が通り過ぎないように一旦鍋を火から外して味を染み込ませますが、このとき温度が下がるから味が染み込むのか、単に時間が経ったから味が染み込んだのかは分かりません。
つまり、煮物を冷やすことよりも高い温度で保温することの方がもしかしたら味は染み込みやすいんじゃないの?ということが言えるわけです。
そこで2012年に、煮物の保温温度を変えたときの食材への味の染み込み方について実験(1)が行われています。
実験方法は、
- ジャガイモ
- 大根
- こんにゃく
を用意して、それぞれ沸騰した食塩水で食べられる柔らかさになるまで加熱します。そして、煮あがったものを
- 95℃
- 80℃
- 50℃
- 30℃
- 0℃
の温度まで下げて、その温度で保温し続けました。
煮汁に浸かっている時間が同じ場合、温度の高い状態をキープしたものと、しっかりと冷やしたものを比べた時どちらのほうが味が染み込んでいるのかを調べたわけです。
温度を下げる方法については、
- 氷水でその温度まで急速に冷却する方法
- と、それぞれの温度の保温機に入れてゆっくりと冷却する方法
に分けました。
その結果、
- じゃがいも、大根、こんにゃくで染み込み方にほとんど違いはなかった
- 浸けている時間が長いほど中まで味が染み込んだ
- 保温温度が高いほど中まで味が染み込んだ
- ゆっくり冷やそうが急速に冷やそうが、染み込み方に違いはなかった
ということが分かりました。
冷めるときに味が染み込むということは、
- 温度が上がるときに味が染み込む量よりも、温度が下がるときに味が染み込む量が多い
- 加熱終了後、保温しておくよりも、温度を下げたほうが味が染み込む量が多い
- ゆっくり冷ますよりも、急激に冷ます方が味が染み込む量が多い
ということが言えると思うのですが、どれも間違っていたということが分かりますね。
つまり、冷める過程で味が染み込むということには何の根拠もなく、さらに急冷してもゆっくり冷ましても違いはないということが分かったわけです。逆に高い温度で保温しておいた方が味が染み込みやすいというわけですな。
そう考えるとおでんなんかは常に煮汁の中で保温してますから、しみしみの料理を作るのには最適な調理法をしているということなんですねえ。
なのにどうして今まで冷めるときに味が染み込むのだ!と言われてきたのかというと、冷めるまでの時間に味が染み込んだために、加熱終了直後に比べて味が濃くなったからなわけですね。
また、味の基本五味(甘味・うま味・苦味・酸味・塩味)のうち温度によって感じ方が変わるのは甘味・うま味・苦味で、酸味と塩味については温度によって感じ方が変わりません。なので、冷めたまま味見したことにより、甘味やうま味などが弱く感じられ塩味がきつく感じてしまったことが原因かもしれません。
ただ「煮汁が染み込む=美味しい」とも限らなくて、煮崩れたり、食材がパサパサになったりすることもあるのでそこは注意ですね。常温で冷ましてると、食中毒の危険性も高まりますしね。
なので、必ずしも味を染み込ませるために冷ます必要はなくて、煮込み続けてもいい料理だったらそっちの方が美味しくなる場合もあるよという話でした。
どうぞよしなに。
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