大根おろしに酢を加えても辛味成分は実は減らない!?


「大根おろしに酢を加えると辛味が減る」と書かれたレシピはたくさんありますが、その理由は酢によって酵素の働きが弱まり、辛味成分が生成されなくなるためだとされています。

しかし実は、酢を加えたほうが大根おろしの中の辛味成分は増えるということをご存じでしょうか?そして、酢を加えたほうが辛みが抑えられるように感じるのは、ただ酸味によって辛味を感じにくくなっただけだという話です。

昔は辛めな大根おろしのほうが好きという人のほうが多かったみたいですが、最近は辛くない大根おろしのほうが好きという人も多くなってきているようです。

本当の意味で辛みを除去するための方法をご紹介します。

大根おろしの辛みを抑えるには?

大根おろしの辛味成分はイソチオシアネートと呼ばれるアリル化合物によるものです。

そしてこの物質はすりおろされる前の大根にはありませんが、すりおろされることによって、普段は別々の場所にあって触れ合わなかったミオシネートという酵素とグルコシノレートという配糖体が化学反応を起こして生成されます。

実際にミオシネートの働きを阻害して大根おろしをすりおろしてみたところ、辛味が出なかったという研究結果(1)も出ております。

つまり、大根おろしの辛みを抑えるには
  1. すりおろした大根からイソチオシアネート(辛味成分)を取り除く
  2. グルコシノレート(配糖体)とミオシネート(酵素)が反応するのを食い止める
  3. そもそも、配糖体と酵素が少ない大根を選ぶ
といったことをする必要があるわけです。

食酢を加えて辛みを抑える方法

酢を大根おろしに加えると辛味が抑えられるとよく言われるのは、酢に含まれる酪酸の働きによって酵素であるミオシネートの活性を抑えることによりイソチオシアネートの生成量を減らすからなんじゃないかと言われているためです。

しかし、1982年に行われた研究(1)によると、大根おろしに酢を加えてもイソチオシアネート(辛味成分)の量は減るどころか、むしろ増えることが分かりました。

イソチオシアネートは揮発性で時間が経つと量が減っていくのですが、食酢を加えたほうはイソチオシアネートの減る量少なかったんだと。

このことから研究者は、

食酢がミロシナーゼ作用を抑制し、辛味成分の生成量を低下させることで辛味が和らげられるとする研究もある。 しかし今回の実験の結果によれば、室温で大根を摩砕すると、組織中に存在していた辛味成分の前駆体が、共存するミロシナーゼの作用を受けて、少なくとも数分以内には完全に分解し、イソチオシアネートが生成すると考えられる。これより、通常家庭で大根おろしをつくり、それに食酢を添加するころには、すでにイソチオシアネート生成量が最高値前後の段階にあると推察される。

つまり、酵素を弱らせようと酢を入れても、もうすでに酵素と配糖体が十分反応してしまっているので意味はないよ、というわけですな。

実際にイソチオシアネートの量がピークになるのは、大根をおろしてから5~8分程度だそうで、やっぱり大根をすりおろした直後にどんどん辛味成分は生まれてしまうようですね。

もし辛味成分が生成される前に酵素の働きを弱めるのであれば、酢とかポン酢をあらかじめ用意しといて、直接そこにすりおろしていくということで効果があるでしょうね。

ただ実際に試食してみた結果、酢を入れてないものの方が辛みを感じなかったらしいんですよねえ。

これについて研究者は、

食酢に含まれる香味によって、大根の辛味成分がマスキングされたのだろう

と。なので、多少時間が経ってしまっても酢の味によって大根おろしの辛味は誤魔化されるってことですね。それでも辛味が気になるという方はさらに酢を入れるタイミングを速めてみると気にならなくなるかもしれません。

大根の辛味成分は揮発性

前述のとおり、大根の辛味成分であるイソチオシアネートは揮発性です。なので放置して時間が経てば辛味成分も抜けます。

しかし、同時に大根に含まれるその他の良い香りもともに抜けていってしまうのが難点ですね。

また、電子レンジ数秒温めるのもイソチオシアネートを空気中に飛ばす方法なので、暖め過ぎて火を通してしまわないようにだけ気を付ければやってみる価値もあるかもしれません。

辛味の少ない部位を選ぶ

大根は部位ごとに辛味成分が違います。というのも辛み成分のもとである配糖体と酵素の量が大根の上部と下部で違うからなんですね。

配糖体と酵素は主に大根の維管束部に集中しています。つまり植物の導管や師管の部分で栄養を取り込む部分ですね。
これは大根の下部、つまり大根の細くなっている部分に多く存在しています。この部分が筋っぽいのはそのためですね。

なので辛くない大根おろしを食べたいのであれば、維管束の少ない大根の上部(葉っぱに近い部分)を選んで作ればよいでしょう。逆に辛いのが好きな方は下部の細い部分を選べば好みの味の大根おろしになるということですね。

時間が経てば辛味成分は抜けていきますが、実際に大根の下部と上部の辛味成分を比較した場合、
  • 3時間おいて辛味を抜いた下部の大根おろしは、すりおろしてまもなくの辛味がまだ抜けきっていない上部の大根おろしと同じだけ辛味成分が含まれていた
という結果もでております。

まとめ

  • 大根おろしに酢を加えてもすでに辛味成分は生成されてしまっている
  • しかし、酢を加えることによって辛味がマスキングされる効果はある
  • それでも辛味が気になるなら、大根をすりおろしたらできるだけ早く酢を加えると辛味成分は生成されない
  • 他に放置する、レンジでちょっと温めるとかでも辛味は抜ける
  • 一番良い方法は大根の下部には辛味成分が多く含まれていることを知っておくことですね
どうぞよしなに。

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